2019.04.16

ネパール野菜栽培への取り組み Vol.2

ネパールの旧正月お祝いパーティー

ネパールの旧正月お祝いパーティー

2019年2月5日

この日は、ネパールのお正月パーティー。
黄色い布を首にかけてもらい、ネパールの正月料理を次から次に振る舞ってもらいました。
おいしい料理をたくさんいただき、ネパールのみんなとダンスを踊り、この日初めて会ったネパール人とも色々な話ができました。

新年のお供え

新年のお供え


新年のお祝いに食べる料理

新年のお祝いに食べる料理


Lhosarパーティーでダンス

Lhosarパーティーでダンス


ダンスを披露してくれたネパール人の友人たち

ダンスを披露してくれたネパール人の友人たち


ネパールのみんなと

ネパールのみんなと

2019年2月7日

松本市役所都市交流課の担当者から、カトマンズ市を訪問した際の様子を聞くために市役所へ。
カトマンズ市の農政部門における責任者も同席していただけたらしく、わたし達の申し出を喜んでくれたようでした。
そして、「saag」の種についても手続きを進めてもらえるとの事です。
ただ、春の野菜は適期が短いため2月中に届くように、航空便で発送してもらえるように、松本市役所都市交流課からカトマンズ市宛にメールしてもらいました。
2月中に届いてくれれば、落ち着いてじっくり計画が立てられます。

都市交流課の担当の方から、カトマンズ市を訪問した際の写真をいくつかいただきました。

スワヤンブナート

スワヤンブナート


カトマンズ市内の丘の上にある仏塔寺院です。ヒンドゥー教徒も仏教徒も訪れます。
崇拝の対象でもあり、また松本で言えば城山公園のような場所でもあり、市内を一望できます。

スワヤンブナートからの眺望

スワヤンブナートからの眺望


上記の丘から見た夕暮れのカトマンズ市の様子です。カトマンズ市には高層ビルはほとんどありません。

パシュパティナート

パシュパティナート


ガンジス川の源流にあたるバグマティ川沿いにある寺院と火葬場です。
こちらで荼毘に付されたご遺体は、川へと流されます。
私たち日本人的な感覚では、意外でありますが、旅行者や市民に開放された場所で、
向かい側の丘は憩いの場所になっています。
生と死を考えさせられる場所です。

カトマンズ市武道館

カトマンズ市武道館


2002年竣工の武道館です。松本市民の募金と外務省の援助により、建設されました。
2015年のネパール地震で一部が損壊しましたが、昨年10月に修復が完了し、柔道のトレーニングに活用されています。

2019年3月1日
2月を終えても種は届きませんでした。
やはり、こういうイレギュラーな案件は行政として担当が決まっている訳もなく、主観部署が定まっていないため具体的な手続きに移るのは難しいと察します。
松本市都市交流課から再度問い合わせてもらうと「手続きに時間が掛かっており、もう少し時間が欲しい。」との事。
先方の事情は察する事ができますが、春の野菜栽培期間は限られています。
そこで松本市内在住ネパール人と話し合い、出たのが「駐日ネパール大使に力を貸してもらおう。」
次の日から、松本在住ネパール人の署名集めが始まりました。

■目的
松本市とカトマンズ市の姉妹都市提携30周年を記念し、ネパールの野菜saagを栽培して松本市在住ネパール人のみなさんに食べてほしいと思います。
カトマンズ市からsaagの種を送ってもらうために、松本市在住ネパール人の署名を集めます。
賛同していただける方の署名をお願いします。

この呼びかけに、41名もの松本在住ネパール人の署名が集まりました。

松本市に住むネパール人から預かってきた41名分の署名

松本市に住むネパール人から預かってきた41名分の署名

2019年3月4日
駐日ネパール大使にお会いして、松本市在住ネパール人と私たち農家のおもいを伝えたいと、ネパール大使館に連絡しました。
先方には日本人の秘書の方がいらっしゃったため、日本語でメールを送付する事ができました。

駐日ネパール大使
プラティヴァ・ラナ様
Cc:松本市役所 関係各位

寒気しだいにゆるんでまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
先ほど電話差し上げました長野県松本市に住む農業者団体、信州ゆめクジラ農園の古田でございます。

私たちの住む松本市は今年、カトマンズ市と姉妹都市提携して30周年を迎えます。
そこで私たちは、普段から畑仕事を手伝ってくれたり、Lhosarのお祝いパーティーに誘ってくれたりする多くのネパール人の友人たちに、私たちの育てた母国の野菜を食べて欲しいと思います。
彼らはとても勤勉で優しく、いつも笑顔を絶やさずに接してくれます。

時々、彼らから電話をもらうとつい、「どうした?」と聞いてしまいます。
すると、すかさず返ってくるのは「そこが日本人の悪いところ!」
「ただ、最近会ってないな。元気かな?って電話しただけなのに、用事がなかったら電話してはいけないの?」と。
そんな人としての在り方も学ばせてもらってます。

私たちにはカトマンズ市と同じく、標高1,000m前後の畑があります。
この畑でsaagを栽培し、彼らにそれを食べてもらうためには、カトマンズ市からプレゼントされたsaagの種がどうしても必要です。
ネパール政府からプレゼントされたsaagを、日本の畑で日本人とネパール人が一緒に栽培し、できた野菜を使った料理をみんなで囲む。
30周年の節目の年にこんな事を実現したいと思います。
同時に、松本市民にもネパール野菜の素晴らしさを伝えたいと思います。

松本市役所の都市交流課担当者からカトマンズ市国際課には、同様のお願いをさせていただいております。
とても好感を持っていただけているようですが、検疫に関する手続きがカトマンズ市ではなく、政府の農林水産省の管轄になるらしく、手続きが難航しているようです。

Saagは日本のワサビ菜や小松菜と同じ分類で、3月中に種を蒔かなければ栽培が難しくなってしまいます。
従いまして、ぜひとも大使のお力添えをいただきたく、どうぞよろしくお願いします。
この話をネパール人の友人に話したところとても喜んでくれ、松本市在住ネパール人たちが署名を集めてくれています。

もし叶うなら、3月8日金曜日の午前中に5分でもいいのでお時間をいただき、お渡しできればと思います。

返事はすぐにいただけました。
大使がぜひ会いたいとおっしゃっていると。

2019年3月8日

目黒区にある駐日ネパール大使館を訪問。
松本市でネパール料理店を経営され、ネパール文字を教わったり色々相談にも乗ってくれているネパール人のPam Khattriさんも一緒に行ってくれました。
この日、私たち信州ゆめクジラ農園の代表は東京国際フォーラムでスピーチする予定が入っていたので別行動です。

ネパール大使館前でKhattriさんと

ネパール大使館前でKhattriさんと


私も緊張しましたが、一緒に行ったKhattriさんはもっと緊張しているようです。
彼曰く、在日ネパール人にとって大使は、いわば大統領のような存在。
大きな式典など、檀上にいる姿を遠くからお見受けする事はあっても、向かい合って座るなんて事はまず無いとのこと。

お会いしてまず感じたのは、とても心のある方だということ。
松本市とカトマンズ市のここまでのやりとりをお伝えすると、担当者同士のやりとりだと「もう少し待ってくれ」が長引き、立ち消えになる案件が往々にしてある。と。
しかし農業の特性上、種を蒔く時期を逃してしまったらワンシーズンを無駄にしてしまう事も十分に理解する。
だから早急に、駐日ネパール大使館からネパール政府に対して公式要請すると、おっしゃっていただけました。

駐日ネパール大使に署名を手渡しました

駐日ネパール大使に署名を手渡しました


そのために必要なのは、ただひとつ。
松本市長からネパール大使への一通の手紙。
この手紙が届き次第、早急に対応すると約束してくれました。
考えてみれば国家を跨るお願い事なので、外務大臣から依頼文書を発行しなさい。と、言われてもおかしくはない話。
彼女の立場からすれば、ハードルを最も低く設定したのだと推測できます。
松本市役所の担当者に一連の流れはお伝えしたので、ここからは私たちの総意として、市長が大使に対し、どれだけ熱く伝えられるかにかかっています。
ネパール野菜の種が手に入るまであと少し。
無事に種が届きネパール野菜が栽培できたら、大使を松本に招待し、松本産ネパール野菜を振る舞いたいと思います。

どうか、おもいが届きますように。

2019年3月13日
この日は松本市役所で意外な方々と打ち合わせ。
日本気象協会さんがカトマンズ市と松本市の気候を比較した資料を持って、東京からきてくれました。

日本気象協会の資料

カトマンズ市と松本市の気候を比較した資料


数値化された情報はとてもわかりやすく、栽培時期や圃場を考えるときの指標となります。

2019年3月18日
大使館を訪問してから1週間以上経過しましたが、未だ松本市長からの手紙は発行されていません。
どうも、私たち信州ゆめクジラ農園の本拠地が松本市ではなく、安曇野市にある事が問題視されているようです。
日本中の各自治体が口にする「広域連携」とは、こういうところではないのか?
私たちは安曇野市に本拠地を置きながらも、松本市の抱える耕作放棄地問題の解決に向かって協力要請を受けて活動しているはずなのに、ここに来て「彼らは肌の色が違うから・・・。」のような視線を浴びている。
地方の問題が解決できない理由のひとつがわかった気がしました。
しかし、駐日ネパール大使も本気で協力しようという姿勢を見せてくれているのに、こんな理由で前に進まないのはあまりにも失礼です。

そこで、この問題を解決するため、次の行動へ。
外務省に協力を依頼しました。
外務省の担当の方は丁寧にここまでの経緯を聞いてくれ、何か協力できる事が無いか内部で検討してみます。との事でした。

2019年3月19日
この日の午後、松本市役所農政課から電話をいただきました。
松本市がネパール大使館に向けて公文書を発行する事が決まったと。

外務省の担当の方は、松本市役所都市交流課に連絡すると同時に、駐ネパール日本大使館にも協力要請してくれたそうです。
あらためて、外務省の担当された方にお礼の連絡をすると、彼女もとても喜んでくれ「種が届くまでがゴールですから、また進捗があれば連絡します。」と言ってくれました。
私はすかさず言いました。
「いいえ違います。種が届いてこそスタート地点に立てるのです。」

課題にぶつかるたびに新しい出会いがあり、協力者が増え、学びがあります。
そして同時に、私たちの責任の重さが加わっていきます。

2019年3月21日
松本市長より、駐日ネパール大使に対して要請文書が発送されました。
4月15日までに松本市役所にsaagの種が届くように手配して欲しいとの内容です。
文書は日本語と英語で発行されました。
文書が届くとすぐに大使の日本人秘書がメールをくれ、大使がカトマンズ市長宛に要請文書のとおり依頼文を書いてくれているとの事です。
さぁ、今度こそ種は届くのでしょうか?

2019年4月15日
期日になっても種は届きません。
そこで再度、大使館に連絡です。
大使の日本人秘書に電話で内容を伝えると、すぐに対応すると言ってくれました。
そして、大使の参事官の方がカトマンズ市に電話連絡してくれ、早急に大使館にsaagの種を送るように連絡してくれました。
大使館が送付先になっていれば大使が進捗を確認しやすく、動きやすいと考えたために受取先を大使館に変更してもらったのでした。
大使館に届き次第、私たちが受け取りに行く予定です。

いくら高冷地とはいえ、そろそろ播種時期はタイムリミットです。
どうか一刻も早く種が届きますように。