2018.11.22
お取引させていただいているレストランからよくこの質問を受けます。
それには3つ+1つの理由があります。
1つ目の理由は「化学肥料の不使用」。
学術書などでよく言われているのは、
① 植物の生育には窒素が不可欠。
② 窒素を簡単に供給するには成分調整された化学肥料が手軽。
③ 窒素は与えすぎると土中の微生物の働きで硝酸態窒素に変わり、野菜が吸い上げる。
④ その野菜を食べると硝酸態窒素は人体内でニトロソアミンという発がん性物質が生成される。
⑤ また、体内に入った硝酸態窒素は血液中の鉄分と結合し、鉄分が毛細血管まで酸素を運んでも酸素を離させないために酸素欠乏を起こす。
⑥ 更に、吸収しやすい形に加工された化学肥料の窒素は約50%が植物に吸収されずに流亡している。
⑦ 流れた先は河川や地下水。人間の飲み水はもちろん、牛の飲み水が牛乳となり人体に入るなど。
スウェーデンやオランダ、ドイツ、イギリスなどでは環境税の課税対象であったり、化学肥料の使用自体が課税対象になったりしています。
ここまでは、学術書や論文などを読んで自分なりに認識した情報であって、「なぜレタスが日持ちするのか?」とは関係ありませんね。
化学肥料を使わない事がなぜ日持ちと関係するのか?
それは、「ふきのとう」からヒントをもらいました。
春先にお取引先から「ふきのとうを送ってほしい」と依頼を受けました。
まだ雪の残る山で「ふきのとう」を採って送って差し上げました。
2週間ほど経ち、同じお店からまた同じ依頼が。
その時に言われたのが「山のものは市場で買ったものとは全然持ちが違う。2週間経ってもまだキレイなままだ。」と。
さっそく私たちも同じ実験をしました。
山から採ったものと、直売所で売っている栽培物を同時に冷蔵庫で保存開始。
栽培物は1週間も経たずに黒ずんできましたが、確かに山から採ってきたものは2週間経ってやっとしなび始めた程度でした。
私は、化学的に言われている事は半分程度しか信じません。
植物の生態も、ましてそれが人体にどう作用するのかも。
今の人間の知識では到底解明できる訳が無いし、もしできているなら絶対病気にかからない野菜や治せない難病など存在する訳がないから。
だから、経験した事を自分が納得できるよう、勝手に論理付けます。
栽培物、おそらく化学肥料を使って育てたものは成長が早く、キレイな色が出せる。
ただし、根から切り離された植物も蒸散は続ける。つまり息を吐く事はできるけれど、吸う事ができない状態。
こうして植物は体内からどんどん水分を失い、蓄積された化学物質の濃度が高まる。
植物は内部に取り込んだ異物(化学物質)に反応し、ダメージが表面化するとともに、味もエグみを増していく。
だから化学肥料は使わない。で、終わらせられるなら誰だって使いません。
私たちは、土中の窒素供給と微生物の活性化のために「たい肥」を作ります。
こうやって土を育てていきます。
結局のところ化学肥料だけで育てるのって、人間生まれてからずっとレッドウィングだけで健康に生きていけますか?って事だと思います。
だからと言って絶対に有機無農薬でなければならない。とは思っておらず、栽培作物によっては必要最低限使う事もあると思っています。
ひとつ目でいきなり長くなってしまいました。。
2つ目の理由は品種選び。
レタスに限らず、ゆめクジラで取り扱う野菜は海外品種が多いです。
それはオシャレとかそういうのではなく、原種に近いものが多いから。
国内の品種改良で優先される項目は
「貯蔵性=スーパーの棚で少しでも長くキレイな状態が保てる」「生産性=形が均一に揃えば、規格化されたダンボールにちょうど良く決まった数通りに収まり、運搬も効率的」
このような条件が最優先です。
つまり、日本で行われる品種改良において「味」は優先される項目ではありません。
よく聞く「桃太郎」というトマトは、この項目を完璧にクリアしたから大ヒットしたのであって、どこにでも売ってるあのトマト美味しいですか?
そういうのに比べて、海外品種はもっと素直です。
先祖代々、畑で栽培した野菜から花を咲かせ、種を採り、子孫に受け継いできた元々は野生種。
何万分の1かの確率で稀に出る突然変異種を収穫せずに、そこからまた種を採り栽培したのが、カステルフランコやタルディーボ。
だから個性があって当たり前。
色付きにムラがあるし、生育スピードもまばらだから一斉に収穫もできない。
また背景が長くなりました。
品種選びでこだわっているのは原種に近い品種である事と、実にたくさんの種類を栽培してみて特に葉が肉厚でしっかりしているものを選抜しているという事。
ゆめクジラでは、レタスのシーズンには大体10種類位栽培しています。
そして3つ目の理由。
私たちは、収穫してから24時間以内にレストランへ届けたいと思ってます。
だから収穫作業はいつも陽が西に傾き、空が赤くなり始めた頃に行います。
一日の出荷量に制限をかけているのはそのせいです。
少量ずつ収穫し、すぐに切り口を洗って袋詰めします。
こうする事で湿度を保ち、乾燥から守ってあげるためです。
そして最後のひとつ。
それは、シェフは保存のプロでもある事を知っているから。
私たちが可能な限り最善策を尽くした後は、受け取ったシェフが完璧な処置をして保存してくれます。
この連携が出来て、レストランで食事をされるお客様に感動のひと皿が提供できる。
生産者と料理人、お互いが信頼し合えるから成り立っている。
常々そう感じています。
長文になりましたが、お読みいただきありがとうございました!